ピース又吉さん「火花」が芥川賞受賞! ~ これまでの又吉さん作品のまとめ

すでにニュースでかなり話題になっていますが、お笑い芸人のピース又吉さんの小説「火花」がついに芥川賞を受賞しました!おめでとうございます!ということで、これまでの又吉さんの作品を、時系列にまとめてみました。

火花

火花

第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)

又吉さん初の書籍は小説ではなく、お笑い芸人一の読書家としての書評でした。ただご本人によると

僕の役割は本の解説や批評ではありません。自分の生活の傍らに常に本という存在があることを書こうと思いました。(まえがきより)。

とのこと。太宰治好きで知られる又吉さんですが、それに加え尾崎放哉、江戸川乱歩 といった独自の視点で選んだ通な作家の作品も紹介されています。

第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)

第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)

鈴虫炒飯

書道家の田中象雨さんとの共著。独創的な発想力によるオリジナル四字熟語とその意味が綴られています。ひたすら四字熟語を書いているだけなのに、どこかほのぼのとさせてくれるのは、ご本人のお人柄が表れているのかもしれません。例えば、

【馬面猫舌 うまづらねこじた 】 馬面である上に、猫舌でもあること。解りやすい欠点が二つあり、短所の渋滞を起こすこと。【類語】足臭脇臭
【放屁和解 ほうひわかい 】 凄まじい喧嘩をしていたのに、どちらか、或るいは第三者が屁をこいしてまい、どちらともなく笑ってしまい、
気持ちが収まること。屁に救われること。しょうもないことが、時には大きな何かを解決することもある。

といった具合です。息抜きにいいかも?

鈴虫炒飯

鈴虫炒飯

東京百景 (ヨシモトブックス)

ピース又吉さんが上京してからの間もない頃、まだ売れない芸人だったころの日々から、徐々に芸人としてテレビ・舞台に活躍しはじめる時代の移り変わりを、東京の風景と共に綴ったエッセイ的作品です。今回の芥川賞を受賞した火花にどこか通ずるところがありますね。こんな前書きではじまります。

『東京百景』を書き終えた時、僕は三十二歳の中年になっていた。
青春と云うには老け込んだ。
だが大人と云うには頼りない。
誇れる事は一通りの恥をかいたという事のみ。
あくまでも自分の生活に附随した風景だから場所が随分偏った。
観光の供にはならないだろう。
しかし、これが僕の東京なのだ。東京は果てしなく残酷で時折楽しく稀に優しい。
ただその気まぐれな優しさが途方も無く深いから嫌いになれない。(「まえがき」より)

ぜひ火花と一緒に楽しんでみてください。

東京百景 (ヨシモトブックス)

東京百景 (ヨシモトブックス)

カキフライが無いなら来なかった (幻冬舎文庫)

文芸家「せきしろ」さんとの共著。普通俳句、といえば、五七五ですが、その形式を破って自由に綴る、「自由律俳句」というジャンルの作品。妄想文学の天才と呼ばれるせきしろさんと、お笑い芸人であるピース又吉さんがが自由に綴る作品は斬新ですが、

「雨と冷蔵庫の音に挟まれ寝る」(せきしろ)
「転んだ彼女を見て少し嫌いになる」(又吉直樹)

など、どこかで誰もが経験しているようなみじかな風景を詠っています。これまでの作品とはまた一味違った又吉ワールドをどうぞ。

カキフライが無いなら来なかった (幻冬舎文庫)

カキフライが無いなら来なかった (幻冬舎文庫)

まさかジープで来るとは (幻冬舎文庫)

カキフライが無いなら来なかった (幻冬舎文庫)に続く、せきしろさんとの共著俳句集第2弾。

「後追い自殺かと思われたら困る」(せきしろ)
「耳を澄ませて後悔する」(又吉直樹)

など、前作に負けず劣らずお二人の妄想世界が広がるユニークな俳句集。文庫化されるにあたって、書き下ろしの作品も収録されたようで、ぜひカキフライが無いなら来なかった (幻冬舎文庫)と一緒に読んでみてください。

まさかジープで来るとは (幻冬舎文庫)

まさかジープで来るとは (幻冬舎文庫)

新・四字熟語 (幻冬舎よしもと文庫)

ここから今年(2015年)の作品ですが、なんと又吉さんは今年になってすでに3作を出版しており、作家活動がかなりエネルギッシュになってきているようです。この作品は鈴虫炒飯に続く四字熟語集第2弾で、

構内抱擁とは真夜中の駅構内で抱き合っているカップル、転じて「なぜここで?」という意。肉村八分とは鍋や焼肉で、他の皆が示し合わしたように肉を食べさせてくれないこと・・・(中略)・・・

などなど、前作に続きユニークな四字熟語が収録されています。

新・四字熟語 (幻冬舎よしもと文庫)

新・四字熟語 (幻冬舎よしもと文庫)

芸人と俳人

俳人 堀本裕樹さんとの共著で、又吉さんの作品としては俳句集第3弾。 堀本さんに弟子入りした又吉さん、はじめは俳句の創作を「恐ろしい」と表現していますが、2年ほどの弟子生活を通して、徐々に俳句にはまっていく様子がうかがい知れる作品になっています。アマゾンで人気第1位。

芸人と俳人

芸人と俳人

火花

そして最新作「火花」。すでにいろんなところで書評が紹介されているので詳しい解説はお任せするとして・・・ 又吉さんは先の「東京百景 (ヨシモトブックス)」でも自伝的作品を書いていますが、この作品では天才的な先輩芸人と後輩である主人公の、芸人人生を通して、笑いとは?人間とは何か?を問いかける作品、として、よくある芸能人の単なるエッセイといった枠を超えた立派な文芸作品、というところが高く評価され、今回の芥川賞受賞につながりました。

火花

火花

エッセイ、四字熟語、俳句、文芸作品・・・とバラエティーに富む又吉ワールドですが、ぜひお気に入りの1冊を探すときの参考にしてみてください!